人工股関節置換術を受けられた方へ

日常生活で脱臼を防ぐために

人工関節は正常の成人の関節に比べ関節のかみ合わせが浅いため脱臼しやすいという欠点を持っています。
特に手術の時に関節を完全に切り去るために関節周囲の軟部組織が修復する期間(3ヶ月)に人工関節の脱臼が多く、注意が必要です。
手術後、3ヶ月が過ぎて人工関節の周りに瘢痕組織が充満すると脱臼しにくくなりますが、姿勢によっては脱臼してしまうことがあり、してはならない動作があります。
これから人工関節と長くつきあっていくために身につける必要のあることを説明します。

下記の姿勢をとると脱臼します

110度以上股関節を曲げる姿勢
110度以上股関節を曲げる姿勢
股関節をまげて内側にねじった姿勢
股関節をまげて内側にねじった姿勢

してはいけない姿勢・動作

以下の姿勢・動作は、110度以上股関節がまがったり
膝が内側にはいることにより脱臼しますので注意してください

膝を曲げての前屈
膝を曲げての前屈
体育座り
体育座り
横座り
横座り
割座
割座
足を組む
足を組む
膝をついて登る
膝をついて登る
よじ登る
よじ登る
靴べらを外側から使う
靴べらを外側から使う

靴を履くときは靴べらを外側から使うと膝が、内側に入るのでいけません。
靴下を履く時や爪を切る時も同じで膝をまげて内側に入れる事はいけません

和式トイレの姿勢
和式トイレの姿勢

股関節が110度以上曲がってしまうのでいけません

横向きで寝る
横向きで寝る

膝をまげて内側に入れるのはいけません

浴室での低い椅子に座る姿勢
浴室での低い椅子に座る姿勢

体を洗う時など低い椅子に座るのは、110度以上股関節が曲がってしまうのでいけません

手を伸ばして物を拾う姿勢
手を伸ばして物を拾う姿勢

車イスなどに座りながら下のものを拾うとき、手を伸ばして拾うと、膝が内側に入るのでいけません

してもよい姿勢・動作

あぐら
あぐら
長座位
長座位
正座
正座
靴下や靴を履く・爪を切る時
膝を外側に向け靴下を履く・爪を切る
膝を外側に向け靴下を履く・爪を切る
膝を外側に向け靴を履く
膝を外側に向け靴を履く

椅子やベッドに腰掛け、膝は必ず外側に向けます

どうしても靴下が履けない場合は足を伸ばしてマジックハンド等を使用
どうしても靴下が履けない場合は足を伸ばしてマジックハンド等を使用
就寝時
就寝時
就寝時

手術した足を上にして寝る場合は、手術後3ヶ月間は枕をはさんでください。
枕をはさむことにより膝が内側に入ることを防ぎます。痛くなれば手術した足を下にして寝ることも可能で、その場合は枕をはさまなくてもよいです。

物を拾う時
マジックハンド等を使って拾うことが望ましい
マジックハンド等を使って拾うことが望ましい
関節をまげないよう手術した足を伸ばす
関節をまげないよう手術した足を伸ばす

股関節をまげて内側にねじらないように注意します。マジックハンド等を使って拾うことが望ましいでしょう。

トイレ
トイレ

和式は洋式に変えるのが望ましいでしょう。

和式の便器にかぶせるだけの簡易式便座もホームセンターなどで市販されています。

和式トイレの場合は、左のような姿勢で用を足すこともできますが、手術した股関節を110度以上まげないよう十分に注意しましょう。

入浴時
高めのシャワー椅子を使用
高めのシャワー椅子を使用
足を洗うのにボディーブラシを用意すると便利
足を洗うのにボディーブラシを用意すると便利
手術した足から浴槽に入る時は股を外に向ける。
手術した足から浴槽に入る時は股を外に向ける。
手術した足から浴槽に入る時は股を外に向ける。
腰掛けて入る時は膝を伸ばす
腰掛けて入る時は膝を伸ばす
浴槽の中では正座か長座位、椅子に腰かけて入る
浴槽の中では正座か長座位、椅子に腰かけて入る

これからの日常生活を送るには

  • 畳や布団の生活から椅子とベッドの生活に変えるのが望ましいでしょう
  • 床からの起居ができれば布団に寝ることもできますが布団をたたんだり、上げ下ろしすることを考えるとベッドに変えたほうが良いと思われます
  • 低めの椅子や沈み込むような柔らかいソファーに座ることはできるだけ避けたほうがよいのですが、止むを得ない場合は、座布団などを使用し膝を伸ばして座るようにしましょう

今後一生続けていかなければならないものです。
入院中につけた筋力を維持していく必要があり、人工関節を長持ちさせるためにも長歩きや体重を増やすことは避けて生活していきましょう。