骨と関節について知ろう

先天性股関節脱臼 赤ちゃんの股関節脱臼を防ぐために

先天性股関節脱臼は先天性という文字がついてはいますが、普通の意味での先天性とは違います。
つまり、赤ちゃんがもっている遺伝的な要因のほかに、環境の要素が加わって発生するものが殆どだからです。
この環境要素とはおむつのあてかたをはじめとする、育児の際の赤ちゃんの扱い方です。 お母さん方に覚えておいてもらいたいことは、赤ちゃんは四足動物に近いということです。つまり、 赤ちゃんの股関節は90度ぐらいに曲げている状態が良い位置であって、大人のようにまっすぐにのばしている状態は危険な位置だということです(蛙を想像してください!あの格好が赤ちゃんの正しい姿勢です)。
さらに、関節は赤ちゃんが自分の意志のままに自由に動かせる状態にしておいてあげるのが良く、股関節のことだけを考えればおむつもあてずに裸で育てるのが一番良いのです(とは言っ ても、そんなことをしたら家の中が臭くなっちゃう)。

また、赤ちゃんの意志を無視して無理やり大 人の力で動かすのもよくありません。赤ちゃんと力比べをしたってお母さんが勝つのはあたりまえで、何の自慢にもならないばかりか、赤ちゃんの関節に悪影響を与えることになります。
特に生後4ヵ月までは身長を計る時にも慎重にしなければなりません。ここまで申し上げれば、賢明なお母さん方は察しがついたことと思います。そうです、股関節脱臼は股関節を伸ばした状態でおきやすいのです。
おむつは股おむつ(長方形の布をおしりから股を被ってお腹まであてる)で、もし紙おむつを使うのでしたらちょっと大きめを、衣服は赤ちゃんの手足の動きを妨げないようなデザインのものを選びましょう。

先天性股関節脱臼の検診は、過去には4ヵ月検診時に全員にX線検査を行っていましたが、発生率が極端に低くなったため(予防運動の成果です)札幌では平成9年4月より廃止され、簡単な触診のみが行われています。
従って、以前よりも検診による診断の精度は落ちていると言わざるを得ません。
お母さん方の普段の観察が、早期発見のためにはより重要になっているのです。

主な観察点は、

  1. おむつをあてる時に股が開きづらい。
  2. 左右の脚の長さが違う。
  3. 大腿の内側にできる皮膚のしわが左右対称でない。

などです。これらのどれかに気付いた時は整形外科を受診されるようおすすめします。